(1)平型静置乾燥機
平型静置乾燥機は極めてベーシックな乾燥機であり、小規模な乾燥施設で利用されている。構造は、図1-16に示す概念図のように、穴が開いた床板の上に大豆を入れ、床板の下から送風して乾燥する。送風空気の温度湿度調整は灯油バーナーや電気ヒーターによる加温方式や除湿機によって行う。図1-17に市販されている灯油バーナータイプの平型静置乾燥機の外観を示す。構造が単純なため汎用性に優れ枝付き大豆の乾燥にも利用できる。量産されている平型乾燥機のサイズは床板の面積にして3.3m2~6.6m2程度のものがある。
原料大豆は人力で乾燥箱部に投入されることが多い。投入後は通気をできるだけ一様にするため、大豆を山盛りのままにせず床板に平行にならさなければならない。また、静置型であるから通気方向に乾燥ムラが生じる(風上側が早く乾燥する)ので時々天地替えが必要である。乾減率は堆積高さや送風空気の温度、相対湿度によって多少変化する。排出は、昇降機の排出パイプから排出される乾燥済み大豆を袋取りや箱受けすることができる。図1-18に、平型静置乾燥機の大豆乾燥経過の例を示す。この図は、堆積通気乾燥経過の基本的形でもある。平型静置乾燥機は構造的にも乾燥形態も極めてベーシックであり、以下に説明する乾燥設備のほとんどがこの乾燥機の発展型と考えてよい。あるいは、平型静置乾燥機で発生する上下層水 分ムラ解消のための天地替えを機械力で実施していると考えることができる。
図1-18 平型静置乾燥機の乾燥経過の例
平型静置乾燥機の特徴
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(2)連続送り式(流下式)乾燥機
大豆乾燥に使用される連続流下型乾燥機は上部が解放した傾斜床式乾燥機が利用されている。縦型の山形多管式やスクリーン式の連続流下式乾燥機が少ないのは初期投入時に、大豆が高所から落下する際に生ずる金属部との衝撃損傷を緩和するのが難しいことが理由である。
傾斜床式乾燥機はルーバプレート構造の傾斜通気床が1枚あるいは2枚で構成される機種がある(図1-19)。通気床の幅は2.4m、長さ7.6mで1m当たり15枚のルーバプレートが重なりあっており、各ルーバプレート間の3.5mmの隙間が通気孔となり、堆積層に乾燥空気を押し込む。通気床の傾斜角度は仰角26度で大豆は通気床上を移動しながら乾燥する。傾斜床上部に1m間隔で7カ所翼付きローラが取り付けられ、穀層厚さを一定に保つと同時に、ここを通過することで上層と下層の大豆が攪拌される。傾斜床式乾燥機は滝の様な構造から別名カスケードドライヤとも呼ばれており、翼付きローラはローラダムとも言う。
同様の傾斜床式乾燥機で通気床の傾斜角度が7度と緩傾斜で、傾斜通気床が2枚で構成される機種がある(図1-20)。ルーバ構造の通気床上をアングル鉄製のロッドチェーンコンベヤ5(チェーン・スラット)が移動する強制駆動式で、翼付きローラはなく穀層厚は入り口部のゲート高さで調節する。穀粒は上段から下段へとスイッチバックするが、この位置で穀層の攪拌が行われる。
図1-19 傾斜床式連続流下式乾燥機の概略図(自然流下式)
図1-20 傾斜床式連続流下式乾燥機の概略図(強制駆動式)
連続送り式(流下式)乾燥機の特徴 ここで、iはシェルビングアクセサリーを購入できますか?
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(3)ドライストア(角ビン、丸ビン)
- 基本構造
通常ドライストアと言うと角ビンを呼ぶが、ドライストア機能を持つ設備には角ビンの他に丸ビンがある。はじめに角ビンについて説明する。角ビンの基本的構造は、平型静置乾燥機を大型にして多数連立したものと考えてよい。写真1-5に外観を示す。(この写真外観は断熱施工なしの角ビン部である。)図1-21に角ビンの外観図を示す。
角ビンへの大豆の投入は子実に対する損傷を極力少なくするため、移動式やトリッパー付きのベルトコンベアが採用されることが多い。籾や麦の搬送によく採用されているチェーンコンベア(細長い箱の中をチェーンに取り付けた板で穀物を引きずるように運ぶコンベア)は損傷が懸念されるので大豆搬送には敬遠されて来たが、改良した結果、大豆を運べるものもある。
高い所から大豆を投入する場合は、落下時の衝撃を緩和するためスパイラルシュート(遊園地の螺旋状滑り台の様なもの)などを取り付けることがある。
大豆を入れた各ビンに対する送風はビンの床下に貫通配置した送風ダクトを通して分配される。また、各ビンへの送風量は送風ダクトのダンパーの開閉を空気圧あるいは電動装置などで操作して調整する。図1-22に送風ダクトと大豆排出口等の位置関係を表わすビン側面模式図を示す。図1-22 角ビン側面図
ビンの床から上方への一方向送風で生じる上下層の乾燥ムラはビン間のローテーション(1ビンの大豆全量を別の空ビンにコンベアラインを使用して移し替える)で解消する。平床であるから重力落下では全量排出されない。残った大豆の排出は送風機の風力で行う。角ビンの通風床は空気の吹き出し方向を排出口方向に向けてあり大豆は排出口に向かって吹き飛ばされる(図1-23、24参照)。この空気による排出をエアスイープと呼んでいる。1ビン当たりのエアスイープに必要な風量は乾燥のための風量よりかなり多い。送風機の風量決定はエアスイープ風量と通風乾燥風量をプラスして行われる。しかし、初期水分が低いなどの理由で全体の乾燥スケジュールに大きな影響を与えないと判断される場合は、省エネルギーあるいは� ��風機の小型化の観点から充分なエアスイープ風量をプラスしないこともある。この場合、エアスイープ中は他のビンの送風ダンパーを絞ってエアスイープをするビンに風を集中することになる。すなわち、乾燥を一部休止するか通気量を減じることになる。なお、エアスイープ時には大豆が吹き飛びビン側壁に衝突することがあるので衝撃破損防止のため側壁にクッション材を取り付けることもある。
次に、丸ビンの基本構造を図1-25に示す。堆積通気乾燥という点では容器(ビン)が角か丸かの違いであるが容器構造上では強度的に角ビンより大容量化し易いなどの特性がある。このことから、1ビン容量50トン程度の角ビンが多数連立設置されるのに対し、丸ビンは比較的大容量ビンの少数設置となる傾向がある。利用面では、薄積み堆積乾燥より一時通気貯留など厚積み利用が多くなる。
図1-25 丸ビン基本構造図
大豆に送る空気の状態は、灯油ヒーターによる加温や除湿装置によって調整される。乾減率は、平型乾燥機と同様に堆積高さや大気の温度湿度に左右される面があるが、送風ダンパーの開度調整による風量調整やバーナーの温度調整などにより人為的に調整ができる。ただし、大豆に送る空気の温度や湿度の状態および風量については、割れやしわ、裂皮などの品質劣化が生じないようにしなければならない。
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ドライストアに用いられることが多い灯油ヒーターの例を写真1-6に示す。また、除湿機の構造例をを図1-26に示す。地域によっては大豆の乾燥を大気の絶対湿度が低い晩秋から初冬にかけて実施することが多いので、除湿機の仕様についてはメーカーや専門家と協議が必要である。
写真1-6 灯油ヒータの例
図1-26 除湿機の概念図
ドライストア(角ビン、丸ビン)の特徴
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- 角ビンの送風量推定方法について
堆積通風乾燥は、穀物乾燥の基礎的部分であり、角ビンだけではなく平型静置乾燥機、太陽熱利用型、ラック式あるいは丸型ビンといずれの設備にも共通している。ここでは、計画した送風機で所定の堆積高さに対して要求される送風量が得られるのかどうか推定する方法について説明する。図1-27に、ビンに堆積された穀物の空気抵抗の変化(穀物の通気抵抗特性図)の例を示す。堆積高さが1mから5mまで1m毎の5段階について5本の曲線が描かれている。容易に想像されることであるが堆積高さが高いほど空気抵抗が大きい。また、同一堆積高さの場合は、通風量を増やすほど空気抵抗が大きくなる。別の言い方をすれば沢山通気しようとするほど高い圧力が必要であることが示されている。(なお、図1-27の元となる各種穀物の通気抵抗特� ��を図1-33に示す。)次に、図1-28に角ビンに使用されるリミットロードファンと呼ばれるタイプの送風機の外観を示す。図1-29に、このような送風機の吐出圧力と吐出風量の関係の例図(性能特性曲線図)を示す。縦軸が吐出圧力、横軸が吐出風量であり、吐出圧力が低いほど吐出風量が多いことが分かる。図1-30に、図1-27と図1-29を重ねたものを示す。送風機の性能特性曲線と穀物の通気特性曲線の交点(X1、X2・・・)から、各堆積高さに対してこの送風機が送風できる送風量(Q1、Q2・・・)が読み取れる。これは、単純な例であり送風量の求め方の概念を示したものである。実際には、ダクトの通気抵抗やビン屋根の排気部からの排気抵抗、あるいは排気送風機がある場合はそのことも考慮しなければならずいささか複雑になる。
購入する構造断熱パネルさらに、1台の送風機で多数のビンに送風して乾燥する場合は、各々のビンの大豆堆積高さがバラバラであると通気抵抗もバラバラになるから複雑さが増し、施設担当者は各ビンの送風量を推定しにくくなる(図1-31の概念図参照)。送風量の推定が大きく外れると送風量不足によって予定の乾減率が得られないことになる。さらに、こういう状態を長期間継続させれば大豆の変質を招くことになる。1台の送風機で多数のビンに送風して乾燥する場合は、どのビンにもできるだけ一様に大豆を堆積させることが大切である(図1-32の概念図参照)。1ビン毎に送風機を取り付けた施設の場合は他のビンの影響がないので、各ビンの堆積高さがバラバラでも通風量の把握は単純にできる。いずれにしても、通風量は、適正な乾燥および通気貯留の� �も重要な要素である。積み高さによって通風量がどのように変化するのか、導入した設備の説明書の熟読が必要である。
大気温度に加温をして送風する場合、加温に必要な灯油の燃焼量を求める式を示しておく。
例として、Q=20m3/sec ρa=1.2kg/m3 s=1.046kJ/kg℃ △t=10℃ q=46000kJ/kgとすると、w=19.6kg/h となる。すなわち、風量毎秒20m3の空気の温度を10℃上昇させるためには、毎時約19.6kgの灯油を燃焼するヒーターが必要である。
加温量(上昇温度)の設定は、送風空気の温度湿度と大豆の裂皮やしわの発生程度の関係を良く調べ、問題を起さないようにしなければならない。
(4)循環乾燥機
- 角形循環乾燥機
このタイプの乾燥機の基本構造は、図1-34に示すように通風乾燥部と乾燥休止部(テンパリング部)を縦に配置し一体構造としている。重力落下により上方の乾燥休止部から乾燥部を所定速度で通過し、横コンベアと昇降機によって再び乾燥休止部に戻る循環を繰り返す。このタイプは通常籾や麦の乾燥に多く使用されている。大豆に対しては粒のサイズや強度が異なるため循環中のスクリューコンベアによる機械的損傷や昇降機の投げ出し衝撃などが懸念されていた。現在は、乾燥部やコンベア、昇降機などを改良し大豆乾燥にも使用できる汎用モデルがある。角形汎用循環乾燥機の外観を写真1-7に示す。
乾燥物に送る空気の温度や循環速度などはマイコン制御される。籾麦と大豆の乾燥条件はかなり異なるが、制御プログラムの入れ替えがメモリカード交換だけの手軽さで可能である。機械的損傷防止のため、籾殻と大豆を混合して循環乾燥機で乾燥した実例報告がある。損傷が防止できたほか籾殻によるクリーニング効果が確認された。しかし、大豆と籾殻の混合乾燥は、まだ広く実用化されていない。また、大量に処理する場合は大豆と籾殻の分離装置などが必要になる。
- 丸形循環乾燥機
このタイプも籾、麦の乾燥に多く用いられているが、大豆乾燥もできる。図1-35に外観を、図1-36に構造を示す。ベースとなるのは丸形の平形静置乾燥箱とも言うべきもので、乾燥ムラ解消のため通風床上の乾燥が速い部分の穀物をオーガーでかき寄せ横コンベアと昇降機で上部に移送し、これを繰り返す。大豆乾燥時は自動的に間欠循環をして子実の割れやしわ粒の発生を極力抑制している。穀物に送る空気の状態は、灯油を燃料とする加温装置をマイコン制御することによって調整される。基本形状は堆積通風乾燥であるから薄積み状態から厚積み状態まで容量的に広範囲の乾燥ができる。
- 循環乾燥機の容量選定
乾燥設備の工程の作り方により循環乾燥機の用法は二つある。一つは生原料を乾燥機で受けそのまま乾燥してしまう方法、もう一つは貯留ビンから移送した材料を乾燥する方法である。生受けの場合は、一日の荷受け量を収容できるだけの容量を持つ必要がある。一日の荷受け量を乾燥機一台の容量で除すれば必要台数が算出される。貯留ビンから材料を受ける場合は、一日の仕上げ乾燥計画を達成できる容量とする。一時貯留の項で説明したが、各設備間能力のバランスとコスト低減のため設備全体の能力について検討が必要であり乾燥機容量決定もこれに沿って行う。
循環乾燥機の特徴
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(5)太陽熱利用乾燥施設
太陽熱利用の乾燥施設についてはこれまで沢山の機械や設備が考案されて来た。しかし、現在のところ日本において実用レベルで使用されたり、メーカーが商品として開発して販売している太陽熱利用乾燥設備は少ない。ここでは、現在の日本で大豆乾燥にも採用されている太陽熱利用撹拌通風乾燥施設について説明する。この設備の太陽熱利用の基本的概念を図1-37に示す。ガラスハウスの内部に吸引通風式乾燥箱を設置し太陽熱で暖められた空気を穀物に通気することによって乾燥するものである。この基本概念図に示す程度の設備であれば、ビニールハウスの中に平型静置乾燥箱を設置して太陽熱を利用している農家もあると思われる。
図1-37 太陽熱利用通風乾燥概念図
ここで説明する太陽熱利用撹拌通風乾燥施設の概念を図1-38に示す。スイミングプールのように大きい平型静置乾燥箱(幅約4.8mないし6m、長さは容量に応じて30m程度まで複数のユニットを連結)に自走式張り込み装置や堆積穀物層を撹拌する装置を設けることによって設備の大型化と自動化に成功したものである。撹拌装置は静置乾燥で生じる上下層の乾燥ムラを解消するための装置であるとともに乾燥した穀物を排出装置へ順次送る役割もある。雨天や夜間は通風のみとするが積極的に乾燥を進める必要がある場合に備えて灯油バーナーも装備されており乾燥の安定性を図っている。
図1-38 太陽熱利用攪拌通風乾燥施設概念図
太陽熱利用乾燥施設の特徴
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写真1-8 太陽熱利用攪拌通風乾燥施設内部
(6)ラック式乾燥機
ラック式乾燥設備の基本構造を図1-39に示す。ここでのラック(rack)は棚を意味する。穀物に限らず多種多様なものを乾燥するため開発され汎用性が高い。基本的構造は四角の平型乾燥箱を棚を利用して立体的に配置したものと考えてよい。乾燥箱を平面的に配置したドライストアに対しラック式乾燥機は立体的に配置してある。ただし、一箱の容量は1トン程度とドライストアよりかなり少ない。そのかわり箱の数を多くできるので多くの品種や品質仕分け対応などが小ロットで可能になる。ラックに乾燥箱を出し入れするためスタッカーと呼ばれる運搬機が設けられており、コンピューター制御によって自動倉庫機能を与えられている。すなわち、どこの棚に何が何時入ってどういう状態かなど、コンピューターによって管理され乾燥� ��自動的に行われる。乾燥中に生じる乾燥ムラも反転で解消できるようになっている。乾燥物に送る空気は作物の品目、性状にあわせて加温乾燥あるいは除湿乾燥の選択ができる。
左の図で送風機とダクトが付設されている部分が乾燥ステージである。乾燥済みのものは貯留ステージに移動される。乾燥と貯留ステージの数量や割合は、大豆の処理量や乾燥時間および貯留期間の長短(期中出荷の量)などの条件によって決められる。
図1-39 ラック方式乾燥設備
ラック式乾燥機の特徴
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(7)乾燥設備の選定
ここまで、各種乾燥設備の構造と特徴について説明した。乾燥設備は、利用条件(要求仕様)に対して能力コスト両面から適切であることが必要である。また、設備は、その設備に合った条件範囲内で所定の能力や使い易さを発揮するものであり、この限界を超えた条件に無理に当てはめた選定は避けるべきである。さらに、設備の検討は調製設備も含めて全体的に行う必要がある。
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